今週のお題「おじいちゃん・おばあちゃん」~ひとすじの煙~
今週のお題「おじいちゃん・おばあちゃん」
その日は寒い朝だった。
夜明けとともに昇る太陽がやたら眩しかった。
雲ひとつない抜けるような青い空。
風もまったく吹かない晩秋の青い空。
その中を
祖父の煙は昇っていった。
遮るものはなにもない。
真っ青な青空に描かれた、
ユラユラ揺れる1本の白い線。
目指す先は天の国か。
十数メートルは昇っただろうか。
煙が少しずつ小さくなっていく。
その光景は
空に溶けていくようでもあり、
染み込んでいくようでもある。
最後は
驚くほどはかなくて
悲しいぐらいに呆気なく消えた。
そして
空は元に戻った。
ひとすじの煙が立ち昇っていたことが
ウソだったように・・・。
晴れ渡った晩秋の空。
それは
雲ひとつない、どこまでも高い空であり、
風ひとつ吹かない、どこまでも広い空だった。
僕はただ、ずっと見上げていた。
煙の消えた空をいつまでも。
いつまでも。いつまでも・・・。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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